1型糖尿病のこどもと家族の生活
20. おとなになったときのこと
高校を卒業すると……
高校を卒業して進学や就職をすると、生活状況が大きく変わります。自分で判断したり行動することが多くなります。生活も不規則になりやすくなります。ひとり暮らしを始める人は、何でも自分でするようになります。一方で、糖尿病になってから長い期間が経ち、合併症が出やすくなってきます。
毎日の忙しい生活の中で糖尿病の管理を行っていくためにも、いろいろな経験を積んで、上手にコントロールしていけるように知識を増やし、よい自己管理の方法を身につけていきましょう。
仕事について
糖尿病であるためにできない仕事はありません。元阪神タイガースの岩田稔選手のようにプロスポーツ選手や首相になった人もいます。
しかし、低血糖によって大きな事故につながる危険のある仕事、たとえば、旅客機パイロットやバスの運転手などは、さけた方がよいと言われています。
どんな仕事でも、コントロールが悪くなったり、合併症が進むと仕事が続けられなくなるので、しっかりとコントロールをよく保つことが基本です。
就職の際には、糖尿病について話すか……という問題もあります。進学のときにはほとんど影響しなかった糖尿病ですが、残念ながら採用の際には影響することがあります。糖尿病の管理や受診、保険のことを考えると、糖尿病のことを理解してもらった上で就職することが望ましいですが、採用の際には話さず、就職してから話す方もいます。
病気であることが不利にならないように、何らかの資格や技術を身につけることも望まれますが、自分がやりたいこと、興味のある仕事にどのようにしたら就くことができるのか、根気よく調整していくことも大切だと思います。
また、糖尿病のことを周りの人に正しく理解してもらうような働きかけや、糖尿病があってもきちんと仕事が続けられることを示していくことも大切です。そのためには、やはり糖尿病のコントロールをよく保つことが大切ですね。
仕事のなかにはコントロールが難しくなるものもあります。
近年、インスリンが進歩して、不規則な仕事や休み時間がとりにくい仕事でも、コントロールがしやすくなりました。それでも、食事や運動、休養を適切にとる工夫が必要です。
コントロールを乱しやすい仕事上の問題と対策
- 長時間ほとんど動かない仕事
- 一駅歩いたり、散歩などの運動を欠かさない
- お酒の付き合いの必要な仕事
- お酒の飲み方、つまみのとり方を工夫する
- 食べ物が周りにたくさんある仕事
- 食事時間以外は食べない
- 激しい運動や汗をかく仕事
- 労働に合わせて食事量や回数を増やしたりインスリンを調整する。
水分やビタミンの補給に心がける - 海外出張の多い仕事
- 時差を考えたインスリンと食事の調整をする
外国の食事のカロリー(カーボ)を覚える
運転について
多くの方は問題なく運転できますが、注意することがあります。
- 運転中に低血糖にならないようにする
(空腹時や運動後の運転は避ける、) - ブドウ糖を含む補食を常備しておく
結婚して家庭をきずく
結婚する相手の方には、糖尿病をよく分かってもらう必要があります。
自分できちんと説明しましょう。病院の先生に説明してもらうこともできるでしょう。
結婚しているたくさんの先ぱいがいます。二人で力を合わせて糖尿病のコントロールをするので、ひとりの時より心強く、仲よく過ごされています。
子どもの誕生を望むこともあるでしょう。妊娠中の血糖コントロールがお腹の赤ちゃんにも影響するため、妊娠前から血糖コントロールをよく保ち、計画的に妊娠することが勧められています。妊娠中、出産、育児の時は、糖尿病でないお母さんよりも注意しなければならないことがたくさんあります。多くの先ぱいが、夫や周りの人に助けてもらいながら、元気な赤ちゃんを産み育てています。母乳は、インスリン注射をしていてもあげられます。
赤ちゃんのためにも、家族で協力しながら糖尿病のコントロールもよく保ち、いつまでもお幸せに。
