1型糖尿病のこどもと家族の生活

目次のページへ戻る

19. 合併症がっぺいしょう

糖尿病にみられる合併症

糖尿病に関係しておこってくる病気を合併症といい、低血糖やケトアシドーシスのように急におきるもの(急性合併症=きゅうせいがっぺいしょう)と、数年から10年以上かかってゆっくり進んでくるもの(慢性合併症=まんせいがっぺいしょう)があります。ここでは、慢性合併症についてのべます。
 慢性合併症は、糖尿病のコントロールと深い関係があります。糖尿病のコントロールは、HbA1cに加え、1日の血糖値のうち目標とする血糖値の幅(例えば70~180mg/dL)のなかに入っている時間(TIR)の割合が大きい方がよいと言われています。
 血糖コントロールをよくして慢性合併症をおこさないこと、早い時期に見つけて進まないようにすることが、糖尿病を管理していくうえでとても大切です。

合併症にはどのようなものがあるのでしょうか?

血糖が高いことが続くと、血管や、神経、水晶体(レンズ)などに障害がおきる危険があります。特に、細い血管がたくさん集まっている眼や腎臓(じんぞう)、神経におこりやすくなります。合併症は、し(神経)・め(眼)・じ(腎臓)の順に進んでいくと言われています。また、心臓や脳など太い血管でも障害がおこりやすくなります。

神経の合併症:糖尿病神経障害(とうにょうびょうしんけいしょうがい)について

糖尿病でおこる神経障害は、糖質や脂肪の代謝(たいしゃ:物質を体の中で分解したり合成して、体の中に取り入れたりエネルギーをつくったりすること)の異常によってできた物質が神経細胞の中にたまっていくためにおこるといわれています。糖尿病神経障害は、手足のしびれやいたみ、筋肉痛(きんにくつう)などのほか、げりや便ぴ、立ちくらみなどさまざまです。自分で気づかないことも多いので、アキレスけん反射をみたり、神経伝導速度(しんけいでんどうそくど)や心電図(しんでんず)などで調べます。

眼の合併症:糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)・白内障について

糖尿病網膜症

眼底(がんてい)検査でみることのできる網膜の細い血管に小さな出血が起きたり、血管の一部がふさがってしまいます。さらに進むと、異常な血管や組織が増え、眼底出血や硝子体出血(しょうしたいしゅっけつ)などが起こり、眼が見えなくなってしまう危険があります。視力が悪くなったときに、目の合併症を心配する人がいますが、多くの人は近視(きんし)であり、網膜症とは別のものです。

  • 網膜症は、視神経がとおる黄斑(おうはん)の部分が正常であれば、ほかの部分に出血などがあっても自分では気づきません。眼底検査でみてもらうことが大切です。
  • ※血糖コントロールの状態や糖尿病になってからの期間にもよりますが、15歳を過ぎると増えてくるので、1年に2回位、また、異常があるときには3~6か月おきに眼科で検査を受けましょう。早く見つけることで、悪くなる前に早く治すことができます
白内障(はくないしょう)

高血糖によって水晶体がふくらみ、にごってしまった状態です。多くの人は眼が見えにくくなるので、手術が必要になります。白内障は、網膜症とちがって、糖尿病になってから3年くらいでも起きることがあります。

腎臓の合併症:糖尿病腎症(とうにょうびょうじんしょう)について

腎臓は、体の中でいらなくなったものを糸球体(しきゅうたい)というところで、ろ過(こしとること)して、尿として体の外に出す大切な仕事をしています。糸球体は細い血管がたくさん集まってできていますが、糖尿病腎症では、この糸球体がうまく働かなくなり、体の中のいらなくなったものを体の外に出せなくなります。また、腎臓が悪くなると、血液の中タンパク質が体の外にもれ出てしまい、浮腫(ふしゅ)と呼ばれるむくみが出てきたり、貧血(ひんけつ:赤血球のヘモグロビンが少なくなる)や、高血圧もおこってきます。しかし、早い時期の糖尿病腎症は、自分で気づくことはむずかしく、身体のむくみや、つかれやすいことなどに気づくのは、腎臓がかなり悪くなってからです
 糖尿病腎症を早く見つけるために、外来では尿のなかにタンパクがどのくらいもれ出ているかを調べたり、タンパク質より粒の小さいアルブミンを調べる、微量アルブミン尿の検査を行います。微量アルブミン尿を調べることで、早い時期に糖尿病腎症を見つけることができれば、血糖コントロールをよくすることで腎症をなくすことができます。
 糖尿病腎症を防ぐには、血糖コントロールをよくすることに加えて、高血圧にならないことも大切です。ふだんからうす味に慣れること、定期的に血圧を測るようにしましょう。

  • 慢性合併症は長い期間かかって進むものですから、一時的にコントロールが悪いときにひどくこわがることはありませんが、悪いことが続かないようにしましょう
  • 慢性合併症や心臓や脳など太い血管の障害は、年齢が高くなるほど起こりやすくなるので、おとなになっても定期的に検査することを忘れないようにしましょう
TOPへ戻る