1型糖尿病のこどもと家族の生活

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16. 思春期ししゅんき問題もんだい

小学校高学年になると、いろいろなことを考えたり自分で判断できるようになります。糖尿病の管理について、正しい知識を身につけて自分で考えて行うようにしましょう。これまで親にしてもらっていたことも、少しずつ自分でできるようにしていきましょう。

思うようにいかないとき、
「どうして自分だけがこんなことをしなければならないの?」
「自分のことだからどうでもいいでしょ」
「糖尿病なんか絶対いや」 
など様々な思いをいだくでしょう。

このような思いになることは、あなただけではありません。みんなによくあることです。時間はかかるかもしれませんが、糖尿病のことにきちんと向き合うことで、糖尿病をもつ自分に自信がもてるようになります。病気ではなく、「個性」として糖尿病と付き合っていけるようになるといいですね。自分の気持ちを分かってくれる友達や、同じ糖尿病の友達や先ぱいに話をしてもいいでしょう。
 思春期には血糖コントロールが悪くなりがちです。急に体が大きくなったり、女性らしい/男性らしい体つきになることでインスリンがたくさん必要になります。また、夜おそくまで起きていたり、おなかがすいてたくさん食べてしまったり、受験などのストレスが増えたりしますね。がんばっていても、なかなか血糖コントロールが良くならないこともありますが、がんばったことは必ず将来の自分につながっていきます
 また、親から離れて友達と一緒にいる時間が増えてきますね。この時期に糖尿病のことを自分で考えながら、友達と同じようにいろいろな経験をたくさん積んでいくことが、大きくなった時にとても役立ちます

思春期のお子さんのご家族へ 

小学校高学年のころ:多少の失敗は目をつむり、子どもの経験を見守りましょう。この次はどうしたら失敗しないかを、話し合えるといいですね。
 子どもは自己主張が強くなり、親にあれこれ言われたくないという気持ちになります。子どもが本当のことを話さなかったり、親に伝えないこともありますが、その理由を考えて、時には、よく話し合ってみましましょう

高校生以上:自己管理が進み、身近な友達にのみ糖尿病のことを話し、多くの人には話さない人が増えてきます。でも、親友などに話している人は、よいサポートが得られているようです。親から離れていく時期ではありますが、まだ親の関わりは必要です。
 親は子どもを見守っていてくださいね

受験期の生活

受験はその時期のどの子どもにも親にも大変なことです。
 テストのストレス、塾通い、睡眠不足、運動不足など、糖尿病のコントロールを難しくさせるような要素がたくさんあります。しかし、受験期にもよいコントロールを保てている人もたくさんいます。
 ◎ 規則正しい生活を送っている人は、よいコントロールを保てているようです。
 △ ストレスで間食が増えてしまう人は、コントロールが悪くなりやすいようです。

塾に通う際のポイント

受験のために塾に通う人は多いでしょう。夕食の時間がずれたり、塾の前に軽食をとったり、夜食を食べる人もいるでしょう。

  • 超速効型インスリンを使っている人は、食べる量に応じて追加で注射を打ちましょう
  • 食事や注射のタイミングは病院で相談しましょう
受験当日のポイント

受験の当日に低血糖を起こす不安が、子どもも親も強いようです。

  • 当日はいつものように注射して、食事を十分とるようにしましょう。
  • 低血糖を恐れてインスリンを減らすと、ストレスの多い試験場では血糖が高くなり、気分が悪くなってしまうこともあるので止めましょう。
  • 低血糖に備えて補食を持っていくことも必要です。

実際には、低血糖で受験ができなくなるよりも、風邪などで体調をくずすことのほうが問題のようです。ふだんから風邪をひかないように、うがいや手洗いに気をつけたり、インフルエンザの予防接種を打つなど、体調の管理に気をつけましょう

受験期のお子さんのご家族へ

「糖尿病であることが進学に不利になるのでは?」と心配する人もいますが、糖尿病であるために不合格になることは、まずありません。これまで学校でふつうに生活してきたことや、糖尿病の管理をきちんとしてきたことで、進学後の勉強や活動に問題がないことを示すことができます。
 「よい進学をしてほしい。でも、なるべく近くにしてほしい……」と、親の心配は尽きないと思いますが、本人の考えを中心にして、できるだけ安全な環境を整えるとともに、子ども自身で必要なことができるように励ましたり、相談にのるようにしましょう

思春期のみなさんへ ある先ぱいより

自分のために自分の身体を守って!
 もう少しおとなになった時に後悔しないように生きて!

  • たくさんいろいろな人と接して、本を読んで、いろいろな考えを参考にして
    “自分の考えを持って”
    自分の生き方は自分で決めて
    どんな時も
    • 自分の意志、考えで行動する
    • 自分の行動に責任をもつ
    • 後になって、自分が今、こうしてこのような状態にあるのは、すべて自分が決めて行なってきたことの結果、と納得できる後悔、他人への責任てんかはつまらない but. 反省は別、おおいに反省して改善へ!!
  • 病気があるからといって、できないことはないはず
    何か1つでも、自分に自信をもって自分の得意なこと、良い面をどんどんアピールして!
  • この夢をかなえるために“この人のために”自分がもっともっと健康な身体で生きていたい、と思うことがきっとくるはず
    その時にはいまよりずっと自分の身体が大切に思えてくるはず
    その時まで、大切にしてあげて!
    病気になったのは自分のせいでないかもしれない
    but. この身体を守ってあげられるのは自分だけ、一生つきあうのも自分
  • コントロールがうまくいかない時、勉強や就職の悩みetc.
    自分で考えることに疲れてしまう時もあるはず
    そういう時は誰かに頼った方が良いと思う
    きっと手はさしのべられているはず。自分から心を開いてとびこんでみては?
    あなたのことを助けてあげたい、と思っている人は周りにたくさんいるはずです!
  • “病気のために(いろいろなことをがまんして)生活するのはいやだ 自分のしたいようにする!”って好きなように生活してても、もし、そのことによって身体が犠牲になっている、ってわかっていれば、心の中で辛い思いがあるはず
    一応基本的な生活を送りながら、やりたいことをやろうネ!!
  • これから先“あなたが元気で、幸せに生きていくこと”が、あなたのことを想ってくれるすべての人々に対して、あなたが表すことのできる、一番の“感謝の気持ち”です!

(24歳、女性)

私がこの病気に発病して、もう十年が過ぎようとしています。今日、普通の人と同じように生活できるのも、主治医の先生や看護師の方、そして両親の協力があったからだと思います。
 私がこの病気と十年間付き合ってきて思ったことは、自分が患者だと意識して生活しない方がよいということです。そのことを聞いて反論する人もいると思いますが、僕がなぜその様なことを言うのかというと、日常を楽しみ、コントロールをよくしたいというプラス思考の考えがあるからです。
 私の場合、食事制限やコントロールの保持は絶対守ろう、そして当たり前という事を念頭において生活しています。ただ、常に頭の中には「自分は病人である」と言うことを入れておきたくないのです。入れておくとかえってマイナスの考えになります。
 私には、低血糖や高血糖の症状が具体的に分かります。低血糖は足がだるくなり、高血糖は変に身体がカッと熱くなり、手がむくみだすのです。自分の症状が分かってきた結果、重症低血糖や高血糖はなくなりました(重症低血糖は過去に例がない)。自分(人)にはそれぞれの症状があると思うので、自分の症状を覚えておくと有利でしょう。低血糖は地震と同じようにいつ、どこで襲ってくるか予測できません。ただ敏感に症状を感じ取ることで予防はできます。
 前文に「自分は病人である」と思わないと書きましたが、それは普段の日常生活のなかの事であって、治らない以上自分は病人なのです。だから肝心な場所では自分の現状を認識し、真剣に考えてほしいと思います。
 ですから、私は良い面(意味)での二面性をもつ人間になりたいです。

(高校1年、男子)

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