1型糖尿病のこどもと家族の生活

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05. 血糖測定けっとうそくてい(血糖の値を知る)  

血糖が高いか低いかを知るためには、指先から血をほんの少しとって血糖値を測ります。
 これを、血糖測定(けっとうそくてい)といいます。血糖測定は、低血糖や高血糖を正確に判断し、インスリンの量や補食のしかたと運動のバランスを決めるのに役立ちます。毎日の血糖測定をもとに血糖をコントロールし、合併症を予防しましょう。

いつ血糖測定をすればいいの?

血糖値は食事、運動、インスリンの量によって大きく変化します。糖尿病になったばかりのときや、生活が大きく変化したとき、体調が悪いときなどは、毎食前、毎食後2時間、寝る前に測ってみましょう。だいたい1日3~4回(朝食前、夕食前、寝る前)測ると1日の変化がわかります。

血糖測定のために針を刺す場所は?

血糖測定のために針を刺すところは、手の指の腹(中央よりも“わき”の方が痛みが少ない)で行います。同じ部位に穿刺をくり返すと皮ふが硬くなるので、毎回、場所を変えて針を刺しましょう。
 血液を出す時には、指の付け根から穿刺部位に向かって、ゆっくりと指をもむようにして血液を出しましょう。

血糖測定を役立てよう!

血糖測定をしたら、自分の血糖値の意味(理由)を考えてみよう。

  • 目標とする血糖値とくらべて、高い? 低い? ちょうどいい?
  • 血糖値が高い理由は?
    食事量が多すぎた? インスリン量が足りない? 運動量が少ない?
  • 血糖値が低い理由は?
    食事量が足りない? インスリン量が多すぎた? 運動量が多い?
  • ※血糖測定を多く行えばよいというわけではありません。学校や外出先で、何度も血糖測定をすることは、負担になります。血糖が下がった、あるいは、上がりすぎたと感じた時に、測定してみましょう。
  • ※小さなお子さんは風邪をひいたり、体調をくずしやすいので、血糖値も大きく変化します。また、子ども自身が低血糖や高血糖に気づいたり、知らせたりすることがむずかしい場合は、血糖測定を行ってください。
  • ※体がどんどん大きくなる思春期には、インスリンが効きにくくなります。これは、からだの成長のためのホルモンがたくさん出ることで、血糖値が上がりやすくなるからです。
  • ※また、発症したばかりの時は、からだの中に残っているインスリンを出す力(インスリン残存分泌)も変化しており、インスリン量の調整はむずかしいので、血糖測定はインスリン量を決めるためにも大切なのです。
  • ※血糖値は、食事、運動、インスリンの量、体調やストレス、成長など、多くのことが影響して変化していきます。血糖値を役立てながら、気にしすぎずに、上手にコントロールしながら生活できるように工夫していきましょう。

血糖コントロールの目安

血糖コントロールの目安には、ヘモグロビンA1c(HbA1c)があります。HbA1cは赤血球の中にあるヘモグロビンというたんぱく質にブドウ糖がくっついたもので、パーセント(%)で表されます。血液中のブドウ糖が多いほど、HbA1c も高くなります。HbA1cは1~2か月前の平均的な血糖値を反映しているので、血糖コントロールの目安として 使われます。

インスリン療法や血糖測定の進歩により、2018年 国際小児思春期糖尿病学会のガイドラインでは、「HbA1cの目標は、重症低血糖、軽度から中等度の低血糖が頻発すること、糖尿病の子どもとその家族の過度のストレスや負担を避けながら、可能な限り正常に近い値をめざし、個別に考える必要がある。」としています。

それぞれの子どものHbA1cの目標は、以下の点などを考慮して決められます。

  • インスリンポンプやCGMなどを使っているか
  • 子どもの低血糖や高血糖の自覚
  • 重症低血糖や無自覚低血糖を起こしたことがあるか
  • これまでの血糖コントロールの状況
  • インスリンの自己分泌がどのくらい残っているか
目標とするHbA1c 7.0%未満
目標とする血糖値
空腹時血糖 70-130mg/dL
食後血糖 90-180mg/dL
就寝前血糖 80-140mg/dL

これらを達成するために、国際小児思春期糖尿病学会のガイドラインでは、1日6~10回のCGMまたは血糖測定によるモニタリングと、血糖値に応じて必要なインスリン療法の調整を行うことを推奨しています。

新しい血糖測定器(連続血糖測定システム)

新しい血糖測定器(連続血糖測定システム)

血糖値の変化を継続して測定することができる方法として、持続グルコースモニタリング(CGM:Continuous Glucose Monitoring)やフラッシュグルコースモニタリング(FGM:Flash Glucose Monitoring)があります。CGMやFGMなどの連続血糖測定システム機器は、これまでの血糖測定器と比べて、以下の点が便利です。

  • ①専用のセンサーを腕やお腹に貼り付け、血糖測定器を服の上からかざすだけで、いつでもどこでも、簡単に血糖値(グルコース値)を測定することができます。
  • ②血糖値の上がり方や下がり方の変化がグラフで示されるため、お子さんにわかりやすく血糖値の変化を理解してもらうことができます。
  • ③“点”で見ていた血糖値、また“平均”を見ていたHbA1cとも異なり、日常生活の中での血糖値の動きを“線”で見ることができます。つまり食事の影響や運動の効果、お薬の効果も視覚的に確認することができ、血糖コントロールがしやすくなります。
  • ④血血糖測定用のセンサーを腕やお腹に10日間〜2週間貼り付けるため、血糖測定のたびに針を指す必要もなく、血糖測定時の痛みの負担を大きく減らすことができます。
  • ⑤何らかの原因で低血糖になっている時も、早目に気付くことで症状が重篤になる前に対処することか可能です。
  • ⑥数分後の血糖値が予測できるため、インスリン量を決める時の目安になります。
  • ⑦測定中の日常生活における制限はなく、運動や入浴も問題ありません。

一方、次の点に注意をする必要があります。

  • ①センサーを貼っている部位に赤みや痒み、皮ふのかぶれがみられることがある。
  • ②血液中ではなく、皮下組織の間質液のグルコース値を測定しているので、血糖値の値と少しだけ違いがある。

お子さんの生活に合わせて、使いやすい血糖測定器を選択していくと良いでしょう。

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