1型糖尿病のこどもと家族の生活

目次のページへ戻る

04. インスリン療法りょうほう

どうしてインスリン療法が必要なの?

1型糖尿病では、血糖を下げるはたらきをする「インスリン」というホルモンが体の中で出なくなります。そのため、外からインスリンを体の中に入れてあげる必要があります。

※インスリンを飲み薬にすると、食べ物といっしょに消化され、こわれてしまいます。このため、「ペン型注射器」や「インスリンポンプ」を用いた「インスリン療法」をずっと続けていく必要があります。

糖尿病でない人は、どのようにインスリンが出ているの?

糖尿病でない人は、体がインスリンの量をうまく調整してくれています。インスリンの出方には2種類ありま す。

  • 追加分泌(ついかぶんぴつ):食事によって血糖が上昇したときにインスリンが分泌されます。このため、食後に血糖が上がっても、2時間程で元に戻ります。
  • 基礎分泌(きそぶんぴつ):夜間や食事をとらないときでも少しずつインスリンが分泌されています。このため、血糖が一定に保たれています。

ペン型インスリン注射ってどんなもの?

糖尿病の人は、血中のインスリンが糖尿病でない人と同じようにするため、

  • ①食事にあわせて行う注射:すぐに効くインスリン(超速効型・速効型)
  • ②基礎分泌の代わりとなる注射:ゆっくり長く効くインスリン(持効型・中間型)

①と②の2種類を組み合わせて注射します。
 朝・昼・夕の食前と寝る前の4回インスリンを注射すると、よい血糖コントロールとなります。

※学校や職場で昼食前の注射を打ちにくいときには、注射の回数や方法を変えることもできますので、主治医の先生に相談してくださ い。

1) インスリン量の調節はどうするの?

インスリンの必要量は、食事量と運動量に影響されます。インスリン量を調節したいときには血糖を測定します。調節の方法には、以下の2つがあります。主治医の先生に相談しましょう。

  • ①アルゴリズム法:
    直前に打ったインスリンの効果(血糖値)をみて、次回に打つインスリンの量を決める方法です。測定した血糖値に、もっとも影響を与える時間帯のインスリン(責任インスリン)を増やしたり減らしたりして調節します。
  • ②スライディングスケール法:
    その時の血糖値に応じて、いま打つインスリン量を増やしたり減したりする方法です。
2) どこにインスリンを注射すればいいの?

注射の部位:注射してよい部位は、下の図のとおり、太い血管や神経の少ない部位です。

  • 同じ部位に注射を繰り返すと皮ふが変色したり、かたくなったり、はれたりして、インスリンの吸収が悪くなることや、インスリンがもれてくることがあるので、毎回、2〜3cmの間を開けてずらしていきましょう。
  • 注射部位により吸収速度(効いてくる速さ)が異なります(お腹が一番早いです)。

ペン型注射器でのインスリンの打ち方

3) インスリンはどこで保存すればいいの?
  • 開封前のインスリンは、冷蔵庫の中(ドアポケットあたり)にしまいます。インスリンの効果がなくなるので、凍らせないよう注意しましょう。
  • 開封後のものは常温(30℃以下)で保存できます。高温にならない、日の当たらないところに保管して使いましょう。
     (例:夏場の車内は70度を超えることも……置いたままにしてはいけません!)

インスリンポンプってどんなもの?

インスリンポンプ:インスリン持続皮下注入療法(じぞくひかちゅうにゅうりょうほう:CSII療法)のことです。小型のポンプにより、1日中超速効型インスリンを少しずつ注入(基礎分泌分)できます。そのため、注射を何度も打つ必要がありません。
 インスリンポンプには大きく2種類あります。

食事をするときは、血糖値と食事量(カーボ)にあわせてボーラス(追加分泌分)を注入します。また、ポンプでは、活動量の多い昼間の注入量を少し減らし、血糖が高くなりやすい朝方の注入量を少し増やすというような細かい設定もできます。これによって、健康な人のインスリン分泌に最も近い状態にできます。
 気になる人は、主治医の先生にインスリンポンプについて聞いてみてください。

1) インスリンポンプ使用中のトラブルって、どんなものがあるの?
  • 高血糖
    下に書いてあるような理由で、インスリンが注入できなくなり、高血糖になることがあります。

  • ②テープ部分やポンプ装着部分のかぶれ
    かぶれてしまう理由は、以下のことが考えられます。
    • 同じ場所を刺してしまう
      (生活の邪魔にならないところは限られているため)
    • 固定力の強いテープが使われる
    • テープを繰り返して剥がす

2) インスリンポンプ使用中は、どんなことに注意すればいいの?
  • ①高血糖にならないために……
    • チューブを引っかけない!
    • チューブを踏んだり、折れ曲がらないように注意する!
    • ポンプを水に濡らしたり、落としたり、ぶつけたりしない!
    • 入浴などでポンプを外して再装着した後、インスリンが注入できているか注意する!
  • ②ポンプ使用中のトラブルで高血糖になってしまったら……
    • 喉が渇く、だるいなどの症状が出た時は、水やお茶など、砂糖の入らない水分をとる!必ず緊急セットとして、ペン型インスリン注射を準備しておきましょう!
  • ③かぶれが起こらないように……

    • 同じ場所に刺さない!
    • リムーバーなどを使い、静かにはがす!
    • 皮ふ保護剤を使用してからテープを貼る!
    • スキンケア方法を医師や看護師に相談する!

ペン型インスリン注射とインスリンポンプはどちらがいいの?

どちらを選ぶかは、目が悪い人がメガネにするか、コンタクトにするかを選ぶのに似ています。自分がより良い方、使いやすい方を、みんなで相談して選びましょう。

TOPへ戻る