診断された時に
医師から
1型糖尿病の多くは突然(数日から数か月の経過で)発症しますので、子ども本人も親もみなさん驚かれ、戸惑い、悲しくなります。それは当然のことでしょう。でも多くのひとがそこから立ち上がって、未来に向かって歩き始めます。まずは糖尿病の「と」から勉強が始まり、糖尿病とは何かを頭に入れます。そして具体的な治療のための手段(インスリン注射や血糖測定など)を身につけ、食事、運動や病気になったときに治療をどうするかを学んでいきます。
血糖の調節がうまく行かないときはそこからひとつでも学んでください。そうすると次に役立ちます。さらに社会のなかで生きていく知恵を授けてくれるのが同じ糖尿病の仲間です。医師や看護師抜きで仲間同士の相談から得られるものは多いと思います。
また社会からの経済的な支援(特別児童扶養手当や小児慢性特定疾病など)もありますので、病院では積極的に情報を得ましょう。単にひとりで治療するではなく、回りからさまざまな支援を受け、ベテランになれば次の糖尿病の方をヘルプして、みんなで健康的に過ごしたいですね。
看護師から
お子さんが糖尿病と診断されたとき、お子さんとご家族は、驚きや不安、悲しみなど、さまざまな気持ちをもちながら、家庭での生活をはじめます。小さなお子さんでは、注射や血糖のモニタリングについて理解できないことに加え、体調を崩しやすく、また日々の食事や運動量も一定しないので、血糖値の変動が大きくなりやすいものです。小学生や中学生、高校生では、子ども本人が糖尿病になったことにショックを受けたり、友達との関係や将来が病気によって変わってしまうのではないかと心配することも多いです。糖尿病は、外から見てわかる病気ではありませんし、日本では糖尿病をもつ子どもの数が少ないので、周りの人に分かってもらう難しさを感じる方も多いでしょう。それでも多くのお子さんやご家族は、糖尿病になったことをきっかけとして、周囲の方々の理解や協力を得ながら、より良い生活を考え、工夫しておられます。子どもは、日々の生活を通して成長・発達し、社会で生活していく方法を学んでいきます。糖尿病についても、年齢と共に少しずつ自分で、時には周りの人に助けてもらいながらうまくやっていく方法を、生活のなかで学んでいきます。
インスリン療法などの医療が進歩したり、小児糖尿病キャンプが行われたり、糖尿病を専門とする医師や看護師・栄養士・薬剤師・理学療法士・臨床検査技師などのチーム医療が進むことで、1型糖尿病の子どもの治療や生活はよくなってきており、おとなになってからの重い合併症も減ってきています。看護師は、お子さんが糖尿病と診断されたときから、身近な医療者として、お子さんやご家族がよりよく生活できるように支えていきたいと考えています。糖尿病療養指導士や糖尿病看護認定看護師、専門看護師など、糖尿病ケアの知識や技術を備えた看護師も増えてきています。わからないことや困ったときには、いつでも声をかけてください。
薬剤師から
1型糖尿病と診断された時、インスリン治療を告げられ今後どのようにしたら良いか分からないことが多いと思います。インスリンは100年ほど前に発見され、1型糖尿病の治療薬として開発が進んできました。個々に合わせて使用するインスリンや単位数は異なります。何より日常生活の中でインスリン注射と付き合っていくことへの受け入れには時間がかかると思います。保護者さん、こどもさんをサポートする方々には多くの戸惑いがあると思いますが、人との繋がりを大切に一歩踏み出して下さい。その中で糖尿病についての知識や情報を得てこどもさんの支援にあたってほしいと思います。そのサポートの1人として薬剤師もなりたいと考えています。インスリン・低血糖のこと以外でも良いです、お薬のこと、日常生活で困ったこと、時には治療への不満など何でもご相談下さい。自分が1型糖尿病と伝えられたこどもさんは、自分の病気のことで疑問に思ったことは、先ず身近な家族に相談しましょう。相談できないようなら、かかりつけの先生含め誰でも良いので病気のことを相談できる人をたくさん見つけてほしいと思います。そこで相談したこと、自分は一人ではないことへの気付きと人への感謝は、自分の病気を受け入れる時の手助けとなります。1型糖尿病になったからといって、夢をあきらめる必要はありません。ゆっくりで良いです、一歩前へ踏み出しましょう。
栄養士から
糖尿病と診断されたときに、保護者の多くの方が、厳しい食事制限が必要なのか・・と考えたり、お子さん自身も、好きなものを食べてはいけないのかな、と悲しく思ったりするかもしれません。
食事において、食べてはいけないものはありません。まず大切なことは、糖尿病でない子どもさんと同じように、成長に必要なエネルギー量や栄養素が不足しないように摂取することです。そのため、性別や年齢、身長、体重などをみながら、欠食なく3回の食事(間食を含めて)を規則正しくとることが重要です。
さらに、栄養素のバランスのとれた食事ができるとよいですね。1回の食事で、ご飯やパン、麺類などエネルギー源となる「主食」、たんぱく質を多く含む肉や魚、大豆製品など、血液や筋肉を作る「主菜」、野菜やかいそう、きのこ類などからだの調子を整えるビタミンやミネラルを含む「副菜」や「汁」がそろうと、自然に栄養素のバランスがとれてきます。果物や牛乳、乳製品なども忘れずに。
小児期や思春期は、進級や進学によって生活がひろがり、お一人ずつ治療も異なります。食事の心配や不安なことは、医師や管理栄養士に相談して、自分にあった食事量や食べ方をみつけ、元気に過ごしましょう。