過去の学術集会情報 (学術集会開催のご報告:第28回)
第28回日本小児・思春期糖尿病学会年次学術集会を開催して
2023年7月17日に、大阪駅前のグランフロント大阪にありますナレッジキャピタル カンファレンスルーム タワー Bにて、第28回日本小児・思春期糖尿病学会年次学術集会を現地+ライブ配信の形式にて開催させていただきましたので、ご報告申し上げます。COVID-19の流行が収束したこともあり、おかげさまで253名の方々に参加登録をいただき、盛会のうちに無事終了することができました。これもひとえに皆様方のご高配の賜物と、心より感謝申し上げます。
今回は、“小児から高齢者まで、必要な治療を受け続けることができる社会が形成されるべきであること”を意図して、学会のテーマを「持続可能な糖尿病診療をめざして」といたしました。そのため、今までの学会にはなかった、政治色を前面に出した学会とさせていただきました。
一般演題はすべて口演発表と致しましたが、34題のご応募をいただき、それぞれのセッションで活発な討論、意見交換が行われました。特別講演は国立研究開発法人理化学研究所 情報統合本部 先端データサイエンスプロジェクトの川上 英良先生に「AI・データサイエンスが拓く糖尿病診療の未来」という演題で、急速に進歩を遂げるAIが糖尿病診療にどのような変革をもたらしうるか、その可能性をご教示いただきました。さらに、ランチョンセミナーでは浦上小児内分泌・糖尿病クリニックの浦上達彦先生に「コネクティッドインスリンデバイスを活用した最新の1型糖尿病治療」という演題でスマートインスリンペンによるDx(デジタルトランスフォーメーション)について、ソレイユ千種クリニックの木村那智先生に「1型糖尿病をもつ若者たちの明るい未来を目指して〜医師一人看護師一人の個人クリニックでの取り組み〜」という演題で木村先生の患者さんに対する熱い思いを共有していただきました。
午後には、御多忙で現地出席が叶わなかった、参議院議員かつ小児科専門医でいらっしゃる自見はなこ先生より、1型糖尿病診療に関するビデオメッセージを頂戴しました。自見先生が、1型糖尿病診療を取り巻く諸問題の存在を認識してくださっていることは明白でした。
学会を締めくくるシンポジウムでは「1型糖尿病患者さんが質の高い医療をシームレスに継続するために」というタイトルで、私のメンターである田嶼尚子先生を座長に、あおいクリニックの恩田美湖先生、滋賀県立小児保健医療センターの松井克之先生、南昌江クリニックの南昌江先生、1型糖尿病患者である大村詠一様より、小児から成人期にかけて、質の高い医療をシームレスに受けるために、何が問題で何が不足しているのか、それぞれのお立場から問題提起していただきました。当方もコメンテーターとして発言させていただきました。そして、当日にサプライズ出席していただいた参議院議員こやり隆史先生より、政治的立場から、どのように1型糖尿病を取り巻く諸問題を解決すべきなのかにつき、ご意見を頂戴しました。出席されている方々の表情から、この問題を解決しなければならないという尋常ならざる熱量をステージ上から感じていたことを申し添えます。
朝9時から午後5時過ぎまでの中身が非常に濃い学会で会ったと思いますが、小児1型糖尿病を取り巻く諸問題の解決に向けて、一歩先に進む契機を作れた学会になったのではないかと感じております。今回の学術集会にご参加いただいた皆様、開催にご協力くださった企業の方々、コンペンション・ラボ社に心から御礼申し上げます。
第28回日本小児・思春期糖尿病学会年次学術集会会長
西村理明(東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科)